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学生セミナー:ASKO=DESK=EAO European Fall Academy

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毎年秋にドイツで開催される学生セミナーで、総合文化研究科の欧州研究プログラム(ESP)をはじめとして、東京大学大学院の修士課程に所属する学生が主たる対象です。日本からドイツ・フランクフルト空港までの航空運賃とEFA参加費(2007年度は1350ユーロ:2人部屋での宿泊、3食、ドイツ国内での移動費を含む)は参加者の負担となります。この自己負担分の一部に対してセンターの助成金を充てることも可能です。

2009年度
“The European Union as a Global Actor"

ドイツ・ヨーロッパ研究センターでは、2009年9月にASKOヨーロッパ財団、オッツェンハウゼン欧州アカデミー(EAO)、トリア大学とともに、 European Fall Academy 2009 “The European Union as a Global Actor”を開催しました。 セミナーでは、昨年度に引き続き「グローバルアクターとしてのEU」をテーマに、 ヨーロッパの大学教員による講義やそれに基づく議論などが行われ、ブリュッセルの欧州諸機関への訪問ツアーも企画されました。

日程

2009年9月20日(日)~10月1日(木)

主催およびパートナー機関

  • 東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)
  • ASKOヨーロッパ財団
  • ヨーロッパ・アカデミー・オッツェンハウゼン(EAO)
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European Fall Academy 2009 参加記

福田慧
総合文化研究科地域文化研究専攻・ESP所属

Ⅰ.主な内容(いくつかの講義およびワークショップに関するまとめ)

The EU as a Global actor: and introduction
講師:Dr. Joachim Schild, University of Trier

EUの加盟国は現在27ヶ国、その抱える人口は4億9300万人に昇る。EUとしてのGDPは2006年では世界一、一人当たりのGDPも2007年ではアメリカ、日本に次いで世界三位である。そのため、EUは世界の主要な貿易相手国である。さらに、世界における援助金(development aid)においてEUが占める割合は60%に昇っている。このような点から、現在EUは間違いなく、世界経済および政治における主要なアクターであると言えるだろう。
EUの活動分野として、主に以下のようなものが挙げられる。1)WTOの合意に基づいた貿易政策、2)IMFや世界銀行など、国際金融政策および関係、3)ACP states(Africa, Caribbean, Pacific)など、旧植民地諸国に対する援助、4)外交政策(近隣諸国に対する政策、ASEANやラテン・アメリカなど、他の地域共同体との意見交換、5)アメリカ、ロシア、中国などとの相互関係、6)ガスや石油などのエネルギー安全保障、7)危機に対する介入、8)破綻国家および破綻しそうな国家における復興活動、9)京都議定書やそれ以降における環境政策、10)移民政策。
EUはその分野において、意思決定機関が異なり、三つの柱(three pillars)と呼ばれている。その三つの分野とは、1)ヨーロッパ共同体における領域、2)外交および安全保障に関する政策、3)刑事事件における警察や司法の協力、である。EUの政策決定過程を考えるとき、どの分野について話されているのか、また、どのように政策決定がなされているかを考慮する必要がある。
EUの外交政策の道具として、以下のようなものが挙げられる。1)共通市場へのアクセス、2)貿易政策、3)連合条約(association treaties)、4)EUへのアクセス、5)金融、財政、6)外交交渉。1993年以降EUは旧ユーゴ諸国やアフリカの旧植民地諸国において平和維持活動(civilian, military operations)を展開している。Petersburg-Taskでは人道的支援、平和維持活動を行うことが確認されている。NATOのような共同の防衛政策は欠けているが、紛争後の平和維持や破綻国家の復興等の分野に関しては、アメリカより優れた結果を残してきたと言えるだろう。
EUをグローバルなアクターであるとするとき、どのような評価が下せるだろうか。まず、交易の分野において、EUとして発言することは、その市場規模の大きさから、強い影響力を発揮すると考えられる。さらに、発展、拡大することにより、旧社会主義国の発展、民主化に貢献している。さらに、その影響力はEU未加盟である周辺諸国にも拡大している。しかし、バルカンやイラク戦争における対応において見られるように、加盟国間で意見が割れたことはEUがグローバルなアクターとして行動することの難しさを露呈した。さらに、加盟国が増えたことで、異なる歴史、外交関係をもつ国々の利害を一致させることが難しくなっている。このことは、例えばロシアとの関係を考える際顕著に表れる。また、新規加盟国は旧加盟国に比べ貧しく、彼らにとっては自国の経済の発展が先決であり、EUの発展には興味が薄い。さらに、フランスは自国の旧植民地諸国における影響力が弱まることを懸念し、EUによる干渉を嫌った。そのため、そのような国々における活動では、EUの旗を掲げながら、実際はフランスが行動している、といった状況もあるしかし、それでもフランスがNATOやEUを受け入れたのは、これらの存在がアメリカを介入させ、ソビエトを追い出し、ドイツの台頭を押さえるのに効果的であったためであろう。

A coherent actor?
講師:Dr. Gisela Müller-Brandeck-Bocquet, University of Würzburg

EUは今や約5億人の人口を抱えるグローバルなアクターとして、国際社会において巨大なソフトパワーとしての役割を担っている。それは、民主化の促進者としての存在、さらに環境対策におけるイニシアチブの発揮など、他分野に広がっている。しかし、EUは長い間共通の外交政策、安全保障政策を有さなかった。EUは垂直的、水平的に弱い組織なのだろうか。それともEUとはそれまでにない、何か新しい体系をもった組織なのだろうか。
そもそも今日のEUに繋がるヨーロッパの統合は、ヨーロッパにおけるNATOのプレゼンスを前提としてなりたっていた。EUの創始諸国はすべてNATOの加盟国であった。そのため、EUおよびECとして共同の外交政策が生まれにくいという基盤があったと言える。 しかし1980年代後半から90年代前半にかけて、長くヨーロッパを分断してきた冷戦が終了し、それによりドイツが統一することにより、ヨーロッパはドイツを取り込んだ体制作りを目指すようになった。さらにアメリカの関心がヨーロッパからアジアへ以降したことにより、ヨーロッパでは国際的危機に対し、アメリカやNATOの協力なくして独自に問題に対処することが求められるようになった。
加えて、加盟国が増えたことにより、その関心も多様化した。それまでのEUは各国が旧植民地を抱えていたアフリカとの関係が重視されていたが、中・東欧の新規加盟国はそれらの国々との関係は薄く、むしろ東側に位置する近隣諸国との関係に対する関心の方が強い。このような新しい問題に対して、加盟国が認めることによりEUが扱う新しい分野となる。
EUの政策決定は三本の柱によって、分野によってどの柱で扱われる問題か、加盟国が個別に対処すべき問題かが分けられる。例えば、第一の柱(ECの分野)では加盟国が扱う分野はほとんどなく、政策決定はもっぱらブリュッセルで行われる。外交、安全保障の分野は第二の柱で扱われる分野であるが、イラク戦争に関しては加盟国の意見が割れ、ヨーロッパとして共通の声明を出すことができなかった。このような危機をさけるため、リスボン条約の締結が求められる。また、教育の分野はEUが扱うべき問題ではなく、加盟国個別の問題として扱われる。
EUは、その市場へのアクセスという力を発揮することで、ソフトパワーとして強い影響力を持つ。ロシア、ウクライナ、地中海および中央アジア諸国に対してはEUレベルでの共通戦略が存在する。さらに、文民による復興支援として、アフガニスタン、ギニア・ビサウ、コソボ、また、軍をチャドに展開している。
EUの安全保障や復興支援におけるプレゼンスにおいて、まず、加盟国の関心が異なるという点ではまとまりがない、といえるだろう。しかし、政治に大きく翻弄される国連の復興支援活動に比べ、EUのそれはよりまとまりがあるとの評価を下すことができるだろう。
リスボン条約の締結によってEUとしての外交政策を行う代表ができることによって共通の影響力を生むようになるだろう。また、ヨーロッパにおける安全保障政策の問題は、それぞれ価値観の異なる加盟国の利害を統合する必要があるため、プラグマチックにならざるを得ない。これからのEUには、水平的で、多数国が参加し、さらに国家でないアクターとも協力していくことが求められるだろう。

Europe as a promoter of democracy and human rights
講師:Sebastian Zeitmann, Europa-Institut, Saarland University

法は、憲法、個別法(case law)、基本的原理(fundamental principles)から成る。イギリスのように憲法を持たず、個別法がその役割を果たす国も存在する。全ての国家において個人の基本的人権が侵害される可能性があり、その場合人々は裁判所へ申し立てをする。全ての民主的国家でこの手続きが可能であるべきである。しかし、ヨーロッパにおいて一国、民主的とは言えない国がある。それは、ベラルーシである。ベラルーシには選挙のシステムが存在するが、欧州評議会の協定(convention)に署名しておらず、欧州諸国の中で唯一欧州評議会のメンバーではない。
欧州連合は、石炭と鉄鋼の共同管理を決めた1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)から、1958年には経済(EEC)、1958年には原子力(EURATOM)と、その活動する分野を広げてきた。それまで国際法は国家のみの対象にしたものばかりであり、個人の権利の保護はその対象ではなかった。しかし、欧州司法裁判所(European Court of Justice)は、1963年にはEC法が個人に直接適用されること、さらに、EC法が国内法に優位するという判決を下し、欧州連合が活動する分野は人権や法にまで広がり、人権の保護や確立がその活動目的の一つになった。
リスボン条約が締結されると、人権に関するEU法が国家レベルの法廷で適用されるようになる。しかし、これには例外があり、イギリスとポーランドはその例外として認められている。
欧州評議会は1949年5月5日、人権を保護することを目的に設立された。メンバーとなることができるのは国家のみであるが、近い将来国際機関もそのメンバーとなることが考えられている。欧州諸国のほかに、日本を含むオブザーバーが五カ国存在する。さらに、1950年4月11日には欧州人権裁判所(European Court of Humand Rights)が設立された。これに参加するためには協定(convention)に署名する必要があり、参加各国は国内で行われる裁判に対し責任を負う。一方、訴えを起こす人はまず国内での過程をすべて経てから欧州人権裁判所にはじめて訴えができるようになる。そのため、例えばロシア政府に批判的なことを書いたジャーナリストが裁判を経ず逮捕され、それが人権侵害に当たるとして訴えを起こす場合、まず国内における裁判所の判決を受けてからのみ欧州人権裁判所への訴えが可能となるので、彼が政府から圧力を受けている場合や、身の危険を感じている場合でも直接欧州人権裁判所に訴えを起こすことはできない。現在47人の裁判官がおり、全ての国から選出される。それに対し現在100,000以上の未解決のケースが存在する。2007年には約50,000件の訴えがあった。しかし、すべての国から裁判官を選出する必要があるため、未解決のケースが多数存在するからといって、裁判官の数を増やすことは出来ない。そして、人権の侵害を訴えるケースのほとんどがロシアからきており、その割合は26.7%に昇る。ついで多いにはトルコであり、それにルーマニアとウクライナが続く。先述のように、ベラルーシは協定のないように一部不服があるとして書名せず、欧州評議会に参加していない。

Work Shop: A Successful policy on climate change: A common challenge for Europeans and the Japanese
講師:Severin Fischer

環境問題に関するコペンハーゲン会議が開かれるのに先立ち、会議を再現し、決定を採択した。メンバーは1)日本、2)EU、3)アメリカ、4)小さな島国、5)メキシコ、6)中国とG77(途上国諸国)に分かれ、削減目標、新体制への順応手段、技術移行、財政に関して話し合った。その後、それぞれのグループがプレゼンテーションを行い、各国の利害を確認した後、次は1)財政と順応、2)緩和措置、3)技術移転と、各国の代表者があつまり、それぞれの分野において決定を採択するよう試みた。
私はEUを担当することになり、その後のディスカッションでは削減目標を話し合うグループに所属した。EUは他の先進国が25%温室効果ガスの削減に成功すれば30%の削減をする準備があり、そうでなくても少なくとも25%の削減をする準備がある。EUは単体として削減目標を掲げており、豊かでこれまで多くの温室効果ガスを排出してきた先進各国は削減を義務付けられ、貧しい新規加盟国はある程度温室効果ガスの排出を増やすことが認められている。さらに、EUは排出量取引に市場原理を取り込み、徐々に排出量を削減することで排出権を獲得することがコストになるようなシステムを作り出し、それは経済界からも高い評価を得ている。日本は鳩山政権後、25%の削減を目標として掲げている。中国と途上国は今日の温室効果ガスによる温暖化現象はこれまで温室効果ガスを排出してきた先進諸国に削減義務があるとし、40%の削減を求めている。アメリカは、1990年度比で17%削減目表を掲げており、それを他国の基準に合わせると削減目標は1桁にとどまる。温暖化による海面の上昇が国家の存続に直接関わる小さな島国諸国は先進諸国に30~40%ほどの削減目標を求めている。メキシコは独自に削減目標を掲げてはいない。
決定を採択する上で最大の争点は、先進国の中で低い削減目標を抱えるアメリカと、途上国でありながら世界第二位の排出国である中国の利害、および温室効果ガスの削減が十分でないとその存続自体が危ぶまれる小さな島国諸国の利害の調整であった。先進諸国が高い削減目標を掲げても、中国が全く削減目標を掲げずさらに温室効果ガスを排出し続ける状況は、地球の温暖化をくいとめるという目的を達成しえない。小さい島国にとっては、十分な削減が達成されない限り、会議に参加する意味さえない。世界最大の温室効果ガス排出国であるアメリカの削減目標は低い。このような状況を踏まえ、私達は次のような決定を採択した。まず、EU、日本はその削減目標の通りそれぞれ30%、25%を削減目標に掲げる。中国は排出量を今のレベルで維持する。アメリカは低い削減目標を掲げるが、途上国、特に小さな島国に対し十分な資金援助を行う、というものである。
このワークショップは、実際の国際会議でどのように決定がなされるのか、どのように各国の利害を調整するのか、ということを実際に感じることができた、という点で非常に興味深いものであった。後に実際に開かれるコペンハーゲン会議でどのような決定が採択されるのか注目したい。

Ⅱ.感想

今回のセミナーは、政治、経済、法と人権保護、環境問題など、扱われた分野が多岐に渡っていた。そのため、あまり基礎知識のない分野に関する講義やワークショップは、それまで深く学ぶことのなかった分野における知識を得るという面では大変興味深かった反面、情報を整理しきれないことも多々あった。全体としては、様々な面からEUという特殊な地域統合を観察できるという面で興味深く、今後の研究に役立つ情報も多いように思われた。
今回のセミナーを通して私が一貫して感じたことは、EUの国際社会におけるプレゼンスは確実に高まっている、ということである。たしかに、EUは27カ国の加盟国から成り立っており、その利害は時として対立する。さらに、その組織は複雑を極め、EUの外交担当者に直接つながる電話がない、といった話に象徴されるように、国際社会におけるアクターとしてのEUの存在を認識することは難しい。そのため、組織をより簡略化し、EUの代表や外務大臣にあたるポストを創設するリスボン条約の締結が求められているが、ここでもその批准を巡って問題を抱える国が存在し、今後どうなるのかは不透明である。
しかし、EUは国際社会におけるプレゼンスを確実に高めている。私がそれを特に感じたのは、環境問題においてである。私達は後に行われるコペンハーゲン会議を再現し、決定を採択するワークショップを行ったが、そこで私が感じたことは、地球温暖化に対する対策を講ずる際、リーダーとなりうるのは現時点では唯一EUしかありえない、ということである。政権が交代したアメリカでは現在国民皆保険の議論が盛んに行われており、環境問題に関する議論は積極的に行われていない。日本も、民主党は政権を獲得したばかりであり、今後の状況は不透明である。一方でEUは独自の排出量取引を作り出し、すでにそれを実行に移しているという点で、すでに世界でこの分野におけるイニシアチヴを発揮している。
EUのような組織が成り立つ要因は様々考えられるだろうが、私は、それがそれぞれの成熟した民主的な国家が主権の一部を委譲し、EUとしての発展が各国の発展につながることが見込まれているからであろう、と考える。そうであるから、各国は主権の一部を移譲し、ある程度の内政干渉を受け入れてまでEU加盟を望む。私達が東アジアにおける統合や協力を考える際、それは一つの考慮すべき点であるだろう。

▼問い合わせ先
ドイツ・ヨーロッパ研究センター
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