シンポジウム等の記録

欧州和解ワークショップ
工藤章・田嶋信雄編『日独関係史』(全3巻、東大出版会、2008年刊)書評会

日時:2008.12.19 Fr. 17:00-
会場:東京大学・駒場キャンパス|18号館4Fコラボレーションルーム3

  • 評者

    村田雄二郎 (東京大学、中国近現代史)
    平野達志 (東京大学、日本学術振興会特別研究員、日独関係史)
    永岑三千輝 (横浜市立大学、西洋経済史、ドイツ近現代史)

    司会

    石田勇治(東京大学・ドイツ現代史)

2008年12月19日、ドイツ・ヨーロッパ研究センターにおいて、『日独関係史一八九〇~一九四五』(全三巻)(東京大学出版会  2008年)の書評会「東アジアにおける日独関係史への新たな視点」が催された。書評会は、はじめに、村田雄二郎氏(東京大学)、平野達志氏(東京大学 大学院博士課程、日本学術振興会特別研究員)、永岑三千輝氏(横浜市立大学)がそれぞれの専門の分野からコメントし、次いで本書編者の工藤章氏、田 嶋信雄氏がこれにリプライし、最後に質疑応答という形で進められた。

村田氏は、中国近現代史研究の見地から、本書について、主に史料や時代区分に焦点を当てて評価した。本書は、日本・ドイツ・中国の公文書館史料に基づく、マルチ・アーカイブの手法を採用しており、史料的に裏付けられた着実な研究と評価できる。加えて、本書が日独関係史の起点として扱う1890年代は、東アジアにおいても、日・中・韓の対立の開始、各国の内政と外交の密接化という点で重要な画期である、と指摘した。 平野氏は、防共枢軸外交研究の観点から、本書の意義についてコメントした。従来の日独関係史は、1930年代以降に集中しすぎていた。これに対し、本書は 時代設定を広くとることで、日独の「伝統的友好関係」が枢軸形成に向かったという、単線的なイメージを打破していると評価した。 永岑氏は、独ソ戦・ホロコースト研究の立場から、本書の意義及び課題を提示した。本書は、日本でドイツへの関心が高まるなか編まれた、時宜を得た体系的な研究であって、高い意義を有している。また日独は、ロシア・ソ連との対抗関係という点で、基本的共通性を持つゆえに、今後の研究では、ロシア・ソ連というファクターをより重視すべきであると論じた。

続いて、工藤、田嶋両氏から、リプライと、今後の研究の課題や展望が述べられた。ここでは、日独関係は常に多国間関係の一部として形成されてきた以上、中・米・ソ・英・仏を交えた地域的な広がりの中で考察されるべきであり、また今後は、戦前と戦後のつながりも研究する必要があるという展望が示された。

その後の質疑応答では、本書の執筆者である加藤哲郎氏、石田憲氏、スヴェン・サーラ氏、浅田進史氏、中村綾乃氏などを交えた、活発な議論が展開された。この中では、ドイツの植民地政策と中国の関係や、中国国民党の対ソ・対独政策など、国際関係の視点からの分析、また、日本における「ドイツのイメージ」やドイツにおける「日本のイメージ」が、両国関係にいかなる役割を果たしたのかという問題まで、きわめて広い分野にわたって議論がなされた。

当日は平日にもかかわらず、40人近くの参加者が集まり、終了予定時刻を過ぎても、熱心に質疑応答と意見交換が続いた。これは、『日独関係史一八九〇~一九四五』が喚起したテーマへの関心の高さを示しているように思われる。

伊豆田俊輔(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻・欧州研究プログラム 修士課程)

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